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2021.11.06

ギャラリー展 帆船「豊丸(ゆたかまる)
※イベントは終了いたしました。

帆船「豊丸(ゆたかまる)」によせて ―ハンセン病患者・回復者の家族をめぐる現状―

近代日本のハンセン病隔離政策は、患者・回復者だけでなくその家族にも大きな被害を与えました。患者の収容を進めるために官民一体となって行われた無らい県運動は、ハンセン病は恐ろしい伝染病であるという間違った認識を広めました。また患者が隔離され、住んでいた家が真っ白になるまで消毒されていく様は、人びとにハンセン病に対する恐怖心を植え付け、患者の排除に駆り立てました。

患者とその家族は、厳しい差別に直面しました。家族が収容されたことが伝わって仕事を辞めさせられたり、井戸を使わせてもらえなくなったり、子どもが学校から通学を拒否されるなど、地域での生活自体が成り立たなくなるようなこともありました。加えて、隔離政策の前から続く「ハンセン病は遺伝病である」との誤解によって、患者の家族への差別、特に婚姻をめぐる差別と排除が続きました。

こうした差別がある限り、患者は、治っていても家に帰ることは困難でした。家族が差別されるのを防ぐため、患者・回復者は生きていることさえも隠し、一方で家族は、身内に患者がいることをひた隠しにして生きてきたのです。

現在もこのような状況はなくなっていません。回復者には、家族から理不尽な扱いを受けることへの苦悩がある一方で、自分の存在が家族を苦しめているという思いがあります。また家族にとっても、差別を受けたことへの不満がある一方で、患者となった親、子ども、兄弟姉妹に冷たい仕打ちをしなければならないことへの罪悪感を持つ人が少なくないのです。

帆船「豊丸」は、そうした苦しみの中を生きてきた回復者とその家族の姿を伝えるものです。誤った感染症対策によって、患者・回復者とその家族が、望まれる関係の構築を阻まれ、双方が深刻な被害を受けたこと、その被害は今も続いていること、そして私たちがこの問題にどのように向き合うのかということについて、皆さまに考えていただくきっかけになれば幸いです。

2021年11月
国立ハンセン病資料館

開催概要

【会期】
2021年11月6日(土)から 2022年2月6日(日)

【会場】
国立ハンセン病資料館 1階 ギャラリー

【休館日】
月曜日、および国民の祝日の翌日/年末年始

観覧無料

※開館時間については「ご来館のみなさまへ」をご覧ください。